大学生の奨学金に関する意見

以下に、文科省に対して、文化人類学若手有志として2010年11月29日に提出した「大学生の奨学金に関する意見」の内容を掲載します。
これは、日本学生支援機構(旧日本育英会)の無利子奨学金の貸与を受ける際の条件について、成績や世帯収入に加え新たに”社会貢献活動への参加”を追加する方針を固めた」という報道を受けて行ったものです。
(なお、意見のうち、個人名に関わる部分等を一部省略しています。) 
 
 
私は文化人類学会 若手懇談会のXXXと申します。先月末文科省が発表した「育英会の無利子奨学金の貸与を受ける際の条件について、成績や世帯収入に加え新たに”社会貢献活動への参加”を追加する方針を固めた」という案件に対して、我々として意見集約をしましたので、この場を借りて、強くお伝えしたいと思います。
無利子奨学金貸与条件に「社会貢献活動への参加」を追加することに関して、11月中旬から下旬にかけて意見を集約しました。
無利子奨学金貸与条件に「社会貢献活動への参加」盛り込むということには反対、もしくは消極的な意見が多かった。

以下が代表的な意見です。

  • 学生のほんぶんは学業なのに、こんな項目を入れるとボランティアばかりしてほんぶんを疎かにする学生がでてくる。
  • ただでさえ奨学金を借りる際の制約が多いのに、これ以上条件を増やす意義が不明。
  • 「教員免許取得における介護等体験」を義務付けられて現場での体験をしたが、その過程で多くの現場が負担を強られている。
  • ボランティア等の「社会貢献」を学業や研究と平行して行うことは、学業や研究の発展にはつながらない。
  • 貸与は「学業や研究」のための貸与であり、ボランティアという別の制約を設けることは趣旨と合致しない。
  • 勉学への意志と向上心を持つ多くの人が学業と続けることそのものが、「社会貢献」である。
  • ボランティア等の社会貢献は、本人の意思で行うものであり、国が貸与への条件として課すことは、ボランティアの本来の意味と反する。
  • 「社会貢献活動への参加」という条件を盛り込むことは、研究そのものが社会貢献ではないというコノテーションを感じるので、納得できない。そもそも、専念すべきは研究である。
  • 何らかの活動への参加を「義務付ける」ということであれば、反対します。奨学金を得て学ぶことに専念する、という理念を曲げれば、義務付けられた社会活動も形骸化したものになるのではないでしょうか。
  • 仮に「社会貢献」を条件にするのなら、例えば、大学外での社会調査や、一般の方を対象にした研究報告など教育研究に連動した形で社会教育活動、国民の知育活動への貢献が大学生の「社会貢献」として最優先されるべきである。
  • 審査を世帯収入などで分けず、手間をかけても個々の事情を勘案し、現在の奨学金貸与にあたっての審査基準を細かくして本当に必要な人にのみ奨学金が貸与される制度にするほうが先決ではないかと思われる。


という意見が出ておりますので、我々として、強くお伝え致します。